フライの見た目と釣り師の陥りやすいワナ

そもそもフライフィッシングに没頭している人は「凝り性」の人が多く、その中にはかなりの「変態」がいます。我々の中では、この「変態」という言葉は褒め言葉であり、「勲章」でもあります。(笑
フライを自分で巻かずにショップで購入して使う人も稀にいますが、フライを巻くのもフライフィッシングにおいての大きな楽しみです。
ちなみに、最近は必要最小限のフライしか巻かない僕も、一時は狂ったようにフライを巻き、いっぱいになったフライボックスを見るのが至上の喜びでした。
いろんなビデオも見ましたし、本も読みましたし、仲間の上手に巻いたフライを貰って研究もしました。
もともと手先は器用で、数もそうとう巻いたので、当時のフライはなかなかの出来でした。(自画自賛
オフシーズンは夜な夜なバーボンをロックでやりながら「ニマニマ」しながら何本も巻いていたものです。「変態」でした。
最近は目も衰えて小さなフライを巻くのがしんどくなってきましたし、「使うフライ」しか巻かなくなりました。

前置きが長くなりましたが、「陥りやすいワナ」について書きます。
何度も書いていますが、人間から見たフライと魚から見たフライは違います。
自己満足として綺麗なフライや凝ったフライを巻くのは大いに結構ですが、それが釣果に直結するとは限りません。
以前に見たテレビの番組で、某有名ミュージシャンがフライフィッシングをしていて、「このフライじゃないと釣れないんですよ」と言っていました。
僕はすかさず「東北の渓流でそんなわけないやろ!」と突っ込みを入れました。
また、こんな例もあります。
ある雑誌だったか、YouTube動画だったかで見た郡上のシラメ釣りの際のことですが… 「このフライじゃないと釣れないんですよ!」と、24番の脱ぎかけのシャック(抜け殻)の付いた超精巧なミッジフライを見せて言っていました。
釣果はそれほどではないようでしたが…。
しかし、その日にその少し上流で有名なフライフィッシャーS氏がなんてことのない20番のミッジで爆釣していたということです。
S氏に「何でそんなに釣れるんですか?」と聞くと、「流し方だよ、流し方」という言葉が返ってきました。
思い返してみると前述のミュージシャンも、「なってない流し方」でしたし、魚の出方が速かったですね。

少し前に「ライトパターン」について書きましたが、「人間から見たら最高のフライだけど魚から見たら?」ということがあります。
また、どんなに優秀なフライでも「魚が食べやすい流れ方」が出来ていなければ釣果は上がりません。
同じパターンのフライでも「巻いたばかりの綺麗もの」よりも「使い古したクシャクシャなもの」の方が釣れることもよくあります。
川でのフライフィッシングにおいては、湧水川などの「セレクティブ」な場合を除いて、一番大切なのは「流し方」だと考えます。
「良い流し方」のためには「良い位置取り」「正確なキャスティング」が必要となります。これらは全てリンクしています。
フライに凝り始めた人が陥りやすい「フライパターン偏重」は「麻薬」のようなモノかもしれません。
色んな釣りを経験した上で「フライフィッシング」にハマった人よりも、ブームに乗っていきなりここから入った人ほどこの傾向が強うように感じます。

有名なフライフィッシャーのM氏は「フライフィッシングは釣れないから楽しい」と言い、S氏は「一番釣れるから楽しい」と言います。
僕の腕では「一番釣れるから楽しい」とまでは言えませんが、「たくさん釣れた方が楽しい」のは確かです。
「このフライで釣れたら楽しいじゃないですか!」ということはありますが、「このフライじゃないと釣れないんですよ!」ということはほぼ無いです。
「もっと重要視するべきところがあるのでは?」と突っ込みを入れたくなる釣り人が結構多いことに驚きますね。