人間の目と魚の目(ライトパターン)

人間がイメージしているものと、魚から見ているものとはかなりの違いがあるように感じています。

例えば、フライフィッシングでは魚が捕食している昆虫などに似せた毛ばりを巻きます。
水生昆虫でいえば成虫(アダルト)、亜成虫(ダン)、蛹(ピューパ)、幼虫(ラーバ)それそれを模した毛ばりがあります。
成虫でも羽化したばかりの状態を模したものもあれば、産卵を終えて水面に落ちた死骸を模したものもあります。
陸生昆虫などを模したフライも多種多様です。

では、実物をより忠実に再現したものの方が釣れると思いますか?
答えはどちらかと言えばNOです。
フライブームの頃にカゲロウの幼虫の形を忠実に再現した「フィギアのようなフライ」が売られていましたが、身近で「良く釣れる!」という評判は聞いたことがありません。
実際に自分で使ったわけではないので「釣れない」をいう烙印を押すわけにはいきませんが。(笑)
水中においては「ヘアズイヤー」というフライのように、脚の部分に施した毛が「フワフワ~」となびいている方が脚を動かしている感じに近いのではないかと思っています。
実際に「ヘアズイヤー」は私の経験上確実に釣果を上げています。

エサ釣り師から「足の取れた川虫だと食いが悪い」というような話を聞いたことがありませんか?
これは前述の話しからすると眉唾ものです。
魚の胃の中に「おおよそ食べ物とは言えないもの」が入っていることが多々あります。
木の枝の屑だったり、花の蕾だったり。
脚の揃っていない川虫を食べない魚がこれらを口にするでしょうか?
「万全の状態の川虫は良く釣れる」理由はこうだと考えています。
川虫の脚が取れないように細心の注意を払っているぐらいの釣り師は、全てにおいて目が行き届いている「腕の良い釣り師」だと思われます。
万全の状態の川虫だから釣れるというより、それだけ気を配っている釣り師だからこそ釣れているのだということです。
そういう釣り師は手返しも良いでしょうし、状況を読む力も優れていると容易に想像がつきます。
要は、「川虫の状態」が釣果を影響しているというより、「釣り師の腕」が釣果に繋がっているのです。

「ライトパターン」というフライフィッシングの用語があります。
浮いているフライが水面を歪ませることにより生じる光の屈折です。
これの面積が大きいほど水中の魚から見て目立ちます。
立ち上がっているフライよりもペタッと張り付いているフライの方がライトパターンが大きくなります。
立ち上がっているフライの代表が「スタンダードパターン」であり、張り付いているフライの代表が「パラシュートパターン」です。

使い続けてクシャクシャになったエルクヘアカディスなども使う前よりライトパターンが大きくなります。
発泡素材で浮力を得ているフライは浮力材が「氷山」のように浮くため、ライトパターンは比較的小さいです。

ただし、ライトパーンが大きいほど釣れるという単純な話ではありません。
湧水の川で「○○カゲロウのダン(亜成虫)だけを捕食している」というような局面ではパラシュートパターンを投げてもほぼ釣れません。
対して、「流れてくるエサなら何でも口にしないと生きていけない」環境下では、ライトパターンが大きいほど魚が出る確率は高くなります。
しかし、大きなパラシュートでテールも長かったりするとフッキング率はかなり低くなります。
「状況に合わせたフライセレクト」が大切で、「釣果を上げるキモ」になるということです。

今回はフライの形状や見え方などに話を限定しました。
次回はフライの見た目と釣り師の陥りやすいワナなどについてお話します。

リーダーティペットの長さと釣果の相関関係

渓流でのフライフィッシングの話です。
僕はいわゆる「ロングリーダーティペット派」です。
里見栄正さんを師として仰いでいますので当たり前ですが。
具体的には17~20ftで状況に合わせて調整しています。
小さい流れや大きなフライを使う時は短めですし、大きな流れや魚がスレている時などは長くします。
ロッドの調子や釣り師のスタイルにもよるので一概にどちらが良い悪いとは言えませんが、長い方が釣れるとは思っています。

では、ロングーリーダーティペットの長所は何でしょう?
『ドラグフリーで流せる距離が長い』これに尽きます。
特に向こう岸の巻き返しなどでは圧倒的に有利です。
通常の長さのリーダーティペットでドラグフリーの時間を長くとるためには「カーブキャスト+メンディング」という方法が一般的ですが、向こう岸の巻き返しなどではなかなか難しいものがあります。
これがロングリーダーティペットで里見式「曲げる・固める」を使えば巻き返しでのドラグフリーの時間が圧倒的に稼げます。
ドラグフリーで長く流せるということは魚が出る確率も上がります。

では、ロングリーダーティペットの短所は何でしょう?
「ライントラブルを起こしやすい」「大きなフライが投げずらい」などがあります。
上が開けた場所なら良いですが、樹に覆われている場所や周りに障害物が多い場所などでは苦労します。
また、風が強い時などもトラブルが増えます。

キャスティングの技術は練習や経験で習得するしかないですが、トラブルを軽減させる方法はあります。
フライのファンデーションを最小限にすることです。
フライ自体の空気抵抗が低くなるだけで投射性が向上し、ピンポイントを撃てるようになりますしトラブルも激減します。
自分の釣りスタイルに合わせたフライを自分で巻くことはマストです。

前述の釣り仲間のM氏は自分でフライを巻きません。
店で売っているフライはファンデーションが多く、ロングリーダーティペットには不向きです。
それを投げやすいリーダーティペットの長さにしているので、ドラグフリーで流せる距離は短く、対岸の巻き返しや「穴ぼこ」などはほとんど狙えません。
そんなこともあり、毎回圧倒的な釣果の差が出てしまっています。
「楽しみ方は人それぞれ」なので本人が満足しているのであればそれで良いとは思いますが、歯がゆさは感じますね。

忍野のような特殊な釣り場のような「セレクディブ」な状態なら別ですが、渓流においてのフライ選択はとても大雑把で良いと思います。
「クシャクシャ」になっているフライでも釣れますし、「白っぽい」「黒っぽい」ぐらいの基準とあとはサイズですかね。
僕の渓流でのメインフライである「エルクヘアカディス」は、エルクヘアの量が市販のそれの三分の一ぐらいです。
一般的なエルクヘアカディスはボディハックルをボディ全体にらせん状に巻きますが、僕のはヘッド近くにパラッと巻くだけです。
投射性は最高ですし、フッキングも良いですし、何より良く浮きます。
ファンデーションが多い方が浮きやすいと思っている人がいますが、フライの主自体が軽い方が良く浮きます。
僕はオイル系のフロータントを使っていますが、質量が少ない方がフロータントの効き目が大きいと感じています。

要は「ロングリーダーティペットはライントラブルが多くていやだ!」「フライがポイントに入らない」などと敬遠するのではなく、それを解消する手立てを講じることが大切だということです。
トラブルによる集中力の低下などが無ければ、ロングリーダーティペットは「魚を掛ける確率が確実に上がる」と断言できます。

準備の楽しさと大切さ

僕は釣行前の準備が大好きです。
釣行を想像しワクワクしながら準備をする時間は最高です!
極端に言えば釣行そのものよりも楽しいことさえあります。

準備で出来る限りのことをしておけば釣りそのものに集中できます。
例えば、渓流で準備をしているときにライズでもされたらリーダーとティペットの結束もままなりません。
そんな訳で細かい準備ほど釣行前の平静な心理状況の時にするようにしています。
フライフィッシングの場合だと、フライラインのドレッシング、ラインとリーダーの結束、リーダーとティペットの結束などです。
小さいフライを多用しそうなときは、ティペットがアイをちゃんと通るかなども確認しておきます。
とにかく、ポイント到着後いかにスムースに短時間でファーストキャストできるかに注力します。
「僕はの~んびりできて、魚の顔が見られれば良いや~」というひとは別ですが、できるだけ釣果を上げたい、釣りの腕を上げたいという人には必要な要素だと思います。

僕の釣り仲間に、その都度現場でフライラインドレッシングをしているM氏という人がいます。
家でやると床に液が付着して滑るようになるのが嫌だということですが、床に何かを敷いてやれば良いことで、ちょっとの工夫なのにと思います。
「今日は一番初めに良い所を撃たせてあげるね!」と行く道中で言っていても、結局M氏は準備に時間がかかり、「先に始めてて!」ということになります。
フライフィッシングでのM氏の釣果はムムムです。
そこまでの釣果の差が出る理由はもちろん他にもありますので、それは改めて解説します。

ヤマシタ2.0号-2.5号-3.5号エギ

ショアエギングでの場合だと準備は以下の通りです。
①PEラインとリーダーの結束(FGノット)と「PEにシュッ!」の塗布
②入るポイントに合わせたエギ選択の検討とセッティング
③潮に合わせたポイント移動とオプションの検討
④持ち物の確認
特に「どこに入ったら何から投げてどうエギをローテーションするか」などは入念なイメージトレーニングをします。
変態だと言われます。

船釣りの場合もショアエギングの準備に準じます。
夢の中でもイメージトレーニングをしていることがあります。(笑)

「入念な準備」は、僕が比較的経験の浅い釣りでもコンスタントに釣果を上げている大きな理由の一つだと思います。